四〇歳からは余分に「気」を使う
四〇歳からの女性に共通していえるのは、それまでの人生のどんな時期と比べても、「いままで以上にエネルギーを使わざるをえない状態にある」ということです。専業主婦でも働いている女性でも、子どもの有無にかかわりなく、皆おしなべて、エネルギー、つまり「気」を余分に使っています。それまでとまったく同じ生活をしていても、です。
それは一つに、前章で閉経に関連して説明した女性ホルモンが大きく影響しています。
この年代は、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の量が少なくなってくることに加え、卵巣や子宮の機能もおとろえてきます。その結果、脳の指令とカラダの反応とがうまくかみ合わず、カラダは混乱状態にあります。
その混乱の過程で、月経周期の乱れが生じるほか、いろいろな不調を覚えることになるのです。
ただ、カラダにはもともと、第一章でも触れたように、体内環境を一定の状態に保つ仕組み「ホメオスタシス」が備わっています。ホメオスタシスは、「神経系」「内分泌系」「免疫系」という、カラダを動かしている三つの仕組みから成り立っています。
たとえば、強いストレスがかかると、ホメオスタシスの一つ、神経系の働きがくるいだします。具体的には、自律神経という、自分の意志に関係なく、呼吸や心拍、循環、消化など、生命を維持するために必要な働きをもつ神経がダメージを受け、心臓がドキドキしたり、イライラや不眠といった不調を訴えるようになります。
加齢によって体内のホルモンバランスが変化していく時期である四〇歳からの女性については、脳が、そうした「変化」に対して、「ホメオスタシスを崩さないようにしなくては」と働き、カラダをなんとか元の状態に戻そうと必死になっています。エストロゲンが少なくなれば、「もっとエストロゲンを出さなくては」と反応し、卵巣の働きがおとろえてくれば、「卵巣の働きを活発にしよう」と動きます。
こうした過程で、みなさんは、冷えやのぼせ、めまい、動悸、不眠などといった不調を覚えるのですが、カラダの反応自体は正しいことなのです。ですから、不調を感じることは、いい方を変えると「カラダが正常に働いている証拠」ともいえます。
このホメオスタシスの新たな活動に対して、四〇歳からはエネルギーを使わざるをえないのです。
漢方医学の観点からいい換えると、「カラダの変化に対する調整のために無意識のうちに余分な『気(エネルギー)』を使っている」となります。この調整のために使う「気」は、基本的には三〇代までは使う必要がなかったものです。つまり、「四〇代になったら、余分に『気』を使う」わけです。
ただ最近では、本来ならこの「調整のための気」を使うにはまだ早い三〇代なのに、更年期と似た症状を訴える女性も見受けられます。このような人は、「気」を若いころから余分にすり減らしてしまい、「気」が四〇代のように少なくなってしまっている危険性があります。夜更かしや暴飲暴食といった不摂生やストレスなど、いろいろな原因が考えられます。
「気」の使いすぎで三〇代であっても四〇代の不調を経験する可能性があるように、「気」は老化に大きく関与しています。特に「気」を余分に使う門40歳からは気をつける必要があります。
逆にいえば、四〇歳からはカラダのバランスをとるために余分に「気」を使うということさえ理解できれば、「気」が原因となる不調を防ぐための方法はいたって簡単なことです。
- 意識的にムダな「気」を使わないようにし、
- 使った「気」をすぐにおぎなえばいいのです。
つまり、「気の温存と補給」をおこなうのです。これらは、「気の二大養生法」ともいえます。
ただ実際には、なかなか「気」を余分に使っていることを意識できずに、第一章の「四〇歳~五五歳の『気・血・水』チェックリスト」で「気の異常」の項目にチェックがついてしまう人も多いものです。
なぜ「気」を余分に使っていることを意識しづらいのか、ということについて、日ごろの診察で患者さんにお話ししていることを、次に記したいと思います。
- ランニングーブームも要注意
ランニングをつづけていると、血中の鉄分が流出して貧血になりやすく、特に女性はその傾向が強いので、鉄分やタンパク質、ビタミンCやカルシウムなどを多めにとるなど、食生活の工夫が必要なことは、よく指摘されています。 - ムダに頑張らないコツ
脳が「いくら卵巣を刺激してもホルモンは出てこないんだ」「ホルモンが少なくなってきたことに抵抗しなくていいんだ」とわかってきて、女性ホルモン量の変化などに抵抗しなくなるからです。これも、カラダの正常な反応です。 - 休養はカラダのメンテナンス
意識的に休養をとることをすすめ、それはけっして怠けているのではなくカラダの積極的なケアや前向きなメンテナンスであり、日ごろの行動についても、優先順位をつけて、すべてに全力投球ではなく、「力を抜くところは抜く」ようにアドバイスしました。